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絵本 鶴の恩返し
堂々7場面構成。 絵本仕立ての『鶴の恩返し』お楽しみください。
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昔々、川のほとりで一羽の鶴が、傷ついて苦しんでおりました。
そこへ一人の若者が通りかかりました。若者はかわいそうに思って、 その傷をなおしてやりました。
鶴はうれしそうに飛んでいきました。
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その夜、ひとりの美しい娘が若者を訪ねてきました。
「道に迷って困っております。どうか、一晩泊めて下さい。」
「それは気の毒に、どうぞ泊まっておゆきなさい。」
娘はその夜からどこへも行かず、若者と一緒に暮らすようになりました。
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若者は娘と暮らしてたいそう幸せでした。ある日、娘が言いました。
「私に機を織らせてください。でも、決して部屋の中を見ないで下さい。」
娘は毎晩毎晩、機を織り続けました。
やがて織り上がった布は、若者が今まで見たこともないほど、すばらしい布でした。
「この布を町で売って来て下さい。きっと高く売れるでしょう。」
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布はたいそう高く売れました。喜んだ若者はもう一枚、布を織ってくれるように、娘に頼みました。
「では、もう1枚だけですよ。布が出来上がるまで、決して決して部屋の中を見ないでください。」
また、娘は機を織り始めました。
娘は何も食べず、毎晩毎晩、機を織る音が聞こえてきます。
若者は心配になり、とうとう戸を開けて中を見てしまいました。
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と、これはなんとしたことでしょう。部屋の中には娘はいませんでした。
そこでは、一羽の鶴が機をおっておりました。鶴は自分の羽根を抜いて、それで機を織っていたのです。
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「あれほど見ないでくださいと言ったのに、どうして見てしまったのですか。私は、いつか貴男が助けて下さった鶴です。鶴であることを知られてしまったのでは、私はもう、この家にはいられません。」
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鶴は泣きながら、山のむこうへ飛び去ってしまいました。
若者は鶴が飛び去っていくのを、悲しく見送りました。
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それは、数年前のこと・・・
キティさんの「『オペラ・夕鶴』はどうや?」の一言から始まりました。

これは、新春を飾るにふさわしい題材です。
最初に、白い着物を着た娘が、若者に別れを告げる場面が頭に浮かんだので、まずこれを正月休みに製作。
しかし、
「お化けじゃね~のか?」
と、いちゃもんを付けるヤツがウチにいた。
やっぱり、「み~た~な~」の場面が必要です。 作ってやろうじゃありませんか、全場面を!

当初は、「鶴を助ける」「雪の夜、男を訪ねる女」「機織りする鶴」「別れ」・・・と、起承転結を付けて4場面だけのつもりが、絵コンテを作って考えるうちに、堂々7 場面になり、
「それでは、従来のジェニー服飾博物館とは違った演出で、絵本仕立てに」
の、みにーさんからのお申し出を受けて、この作品が出来上がりました。


◆ ◆ ◆
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さて、娘は黒髪と植え換え、着物は対丈の小袖仕立てになっております。
髪型は室町~戦国時代のもの。 白い着物は鶴の気品を、ピンクの着物は恋する乙女の愛らしさを表現しました。市松模様の帯は友人にいただいたリボンの端切れです。蓑笠&藁靴は小包紐とフェルト製です。
機織り機を置く、何にも無い板の間は、桂離宮の廊下の写真を加工して作りました。
機織り機は江戸時代末期に、外人カメラマンが撮影した白黒写真に着色しました。

また、和服には左右があるので、人形は右側、左側、正面の3方向から撮影し、画面の構成を見て採用する写真を決定しました。
笠の影で暗くなる若者の顔には、御菓子の缶の蓋で反射光を当てて撮影しました。
表紙は10年以上前に3カ月かけて製作した「四季のキルト・冬」の一部分です。釧路湿原の写真からデザインを起こしたものです。


参考資料:「湿原の妖精たち・タンチョウ」井出 義雄 京都書院
     「木の住まい」朝日新聞社編
     「写真で見る幕末・明治」世界文化社
     「江戸の暮らし図鑑」高橋 幹夫 芙蓉書房出版
by ningyoya7 | 2008-05-24 14:01 | 日本の童話
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